商工会議所さんの専門家派遣で、飲食店Aさんの相談を受けたことがあります。
Aさんは、焼き菓子を開発していて、その商品で食品卸の世界へ参入したいとのことで、初めの一歩として展示会に出展を予定しているとのことでした。
ご相談を受けた時にはすでにかわいいオリジナルの包装資材もできていて、とても美味しいお菓子でした。
上代も仮ではありますが400円で決まっておりました。
展示会で興味を持ってくださったバイヤーさんと商談になった際、何掛でご提案される予定かお聞きしたところ、おそらくどこのバイヤーさんも仕入れないであろう掛率でした。
包装資材も原材料も決まっているこの状況で適度な掛率に合わせる方法は、上代を上げることです。
私から見た適切な上代は500円でした。
500円にすることをご提案し、展示会当日を迎えました。
展示会開場1時間前に会場でお会いした時、Aさんが言いました。
「上代を上げようと思ったんですが、それだとお客さんが買ってくれないんじゃないかと思い、やめました。。」と。
食品卸の世界は、エンドユーザーが購入する前に、バイヤーさんに注文いただくことの方が先です。
注文いただけない限り、エンドユーザーの目の前に商品が現れることはありません。
ほとんどのバイヤーは、上代ありきで自社の条件である掛率に合うかどうかで注文するか否かを判断されているます。
ですので、掛率が合わない時点でいくら良い商品でも注文の対象にはなりません。
あと、Aさんはエンドユーザーのことを気にされて上代を上げなかったわけですが、例えば設定上代よりも高い上代にした場合、お客様が買ってくださるかどうかは、実際に販売して見ないとわかりません。
エンドユーザーのことを考えすぎて弱気に上代設定することで、そもそもバイヤーさんから注文をいただけないのは、Aさんにとって最もよくないことです。
そう考えた私は、その場で上代を上げることを改めて提案しました。
「でももう上代を書いた提案書を印刷してしまって。。」
と言われましたが、その提案書はExcelで作られていたので、今からデータ修正してコンビニで印刷してくださいとお伝えしました。
即対応してくださって、印刷が完了したのは展示会開場10分前でした。
1時間前に400円だった上代が、10分前には500円になったわけです。
開場後、Aさんのブースは盛況で、展示会後のフォローもしっかりしていただいて、ご注文をいただくことができました。
500円になった商品は、エンドユーザーには問題なかったようで、おかわり注文を何度もいただいております。
エンドユーザーのことを考えすぎて上代を低く設定してしまうと、結果掛率が上がることになり、バイヤーさんから注文をいただけません。そうすると食品卸は前に進みません。
原価のコントロールももちろん必要ですが、一通りやった最後の最後の重要な仕事は上代の確定です。その時にひるむことなく少し強気で上代設定してください。
仮にエンドユーザーに受け入れられなかったとしても、それはその時にまた手を打てば良いのです。
小さな食品メーカーさんが大手と差別化できるのは商品力です。
なので、その商品力がいかに高いのかを販促物やパッケージで表現できれば、少し高くてもお客様は買ってくださいます。
無理して上代を低く設定するよりも、むしろ販促物やパッケージに知恵を絞り、商品力の高さをアピールすることこそ、この商いの醍醐味だと私は考えています。
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