top of page

以前、とあるメーカーさんからこんな話がありました。


東京の展示会に出展して、有名百貨店のバイヤーさんが商品に興味を持ってくださいました。ギフトとしてしっかり売りたいとのことで、わざわざ東京から現地視察に来てくださいました。

 

現地で試食もされてたいそう気に入ってくださって、いざギフトの話を詰めていくことになりました。そこでメーカーさんが提案したのは、販売価格(上代)送料別約2,000円のセットでした。


それを見たバイヤーさんは「それでは安すぎます。4,000円ぐらいのセットを提案してください」と言ったところ、メーカーさんは「2,000円のセットの販売価格は変更してくれて良いので、そのセットを4,000円で販売してください」と言ったそうです。


おそらくバイヤーさんからすると、この時点でメーカーさんからの提案が想定外すぎて、話をまとめるのが難しそうだと判断されたのでしょう。ちょっと考えますねと言って帰られて、その後全く音沙汰がないとのことでした。

 

この事例、私はバイヤーさんの気持ちがよくわかります。このメーカーさんはギフトや卸の商いの知識がなさすぎて、ここから頑張って進めても、莫大な労力を割くことになるだろうなと思ったのだと思います。なのでその後連絡されなかったのだと。


2,000円の商品を4,000円で売ってくださいはさすがに厳しいので、4,000円に見合った内容にしてくださいといえば、もしかしたらこのメーカーさんはそれに応えられたかもしれません。しかし、それだけの想定外の提案をされるメーカーさんなので、それが決まったとしても、その後の掛率の交渉や見積書の作成、契約の手続きなどに苦労させられると思ったのだと思います。

 

卸の商いは、実際の取引が始まるまでに、詰めなければならないことがたくさんあります。商品自体を気に入ってくださっとしても、諸条件が合わなければ成約には至りません。掛率・賞味期限・ロット・リードタイム・一定期間の供給量・JANの割り振り・支払サイト・菌検査書類・PL保険への加入などが、バイヤーの条件に合わなければ注文はいただけません。


バイヤーさんは忙しいので、メーカーさんが諸条件を詰めれていない場合、それをレクチャーしている時間はありません。できる限り最小ターンで取引したいのです。諸条件があらかじめまとまっておけば、あれはどうですか?これはどうですか?というターンがなくてすみます。


なので、あまりに手間がかかりそうなメーカーさんであれば、途中離脱されてしまいます。そうならないように、商談の際、展示会に出展するなら展示会までに、諸条件は詰め切っておくことが大切です。


この話には後日談があります。このバイヤーさんと私が初めてお会いした時にこのメーカーさんの話になりました。バイヤーさんは、「あのメーカーさんと話をまとめ切るのは無理だなと思って諦めたんです。わかってなさすぎだと思ったのです。」と言っておられました。

 

私はバイヤーさんとメーカーさんの間に入って仕事をしているので、バイヤーさんの本音を聞く機会が多いです。メーカーさんに直接言えないことも、私には話してくださることが多いです。本件も、バイヤーさんから直接リアルな話をお聞きしたことで、私の予想が当たっていたことがよくわかりました。

Comentarios


bottom of page